目の病気

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網膜の病気

Retinal disease

糖尿病網膜症

■ 糖尿病網膜症とは

糖尿病に合併する眼底病変で、高血糖を放置して 5~7 年以上経つと、毛細血管と呼ばれる最も細い血管に毛細血管瘤とよばれる小さな瘤ができ、毛細血管が詰まったり、出血や浮腫(むくみ)が起こり始めます(単純型網膜症)。
血管の閉塞が広範囲になると(前増殖型網膜症)、眼底組織の酸素欠乏が起こります。
そのため、新しく血管を作ろうとする生体の反応が起こり、血管が閉塞してなくなってしまった場所に網膜新生血管が発生してきます(増殖型網膜症)。
一見合目的と思われるこの反応には、実は問題があります。新生血管は本来の血管より幼弱なため、浮腫や大出血を起こしやすいからです。
一般に糖尿病網膜症は数年をかけて徐々に進行するのため、失明寸前まで気づかないことがよくあります。
重症例では血管新生緑内障と言われる難治性の緑内障も併発します。
ある程度以上に進行した網膜症では、低血糖発作で一瞬にして大量出血を起こしたり、血糖の状態がよくても進行することがあります。
何よりも血糖の管理と、定期的な眼底検査が重要です。

■ 糖尿病網膜症の症状

徐々に視力が低下してきます。眼内に出血すると、飛蚊症を自覚したり、大量に出血すると突然見えなくなります。

■ 糖尿病網膜症の治療

内服治療などをしますが、増殖型の進行例ではレーザー治療が必要です。
前増殖型や、単純型でも黄斑症を発症した場合、レーザー治療を行うことがあります。

■ 糖尿病の眼障害

糖尿病の眼障害としては、網膜症、黄斑症、視神経症、緑内障、虹彩炎、角膜症、白内障、屈折調節異常、眼筋麻痺などがあり、わが国の失明原因の上位を占めます。

ぶどう膜炎

■ ぶどう膜炎とは

眼球内のぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡膜の総称)と呼ばれる組織に炎症が起きる病気です。
原田病、ベーチェット病、サルコイドーシス、糖尿病、リウマチや膠原病などの免疫異常によるものなど、全身疾患と合併するものもありますが、原因不明のものも数多くあります。
点眼薬ですぐ治まってしまう軽症なものや、入院治療が必要なもの、何回も強い炎症発作を繰り返し失明に至る重症な場合もあり、程度は様々です。

■ ぶどう膜炎の症状

霧視(ぼやけて見える)、視力低下、充血、眼痛、羞明(眩しく感じる)など

■ ぶどう膜炎の治療

原因疾患の治療、点眼、内服、点滴治療など。

網膜剥離

■ 網膜剥離とは

人によって網膜の周辺部に弱い部分(網膜周辺部変性)があり、穴や裂け目(網膜円孔・裂孔)になることがあります。
そこから網膜が剥がれてゆく疾患が裂孔原性網膜剥離です。
気づかないうちに進行する場合もあり、いったん黄斑部まで網膜剥離が進行して視力が低下すると、後遺症が強く残ります。
早期発見と治療が必要で、以前に網膜剥離を起こしたことがある方や、網膜周辺部変性の指摘を受けた方、強度近視の方は定期検査が必要です。

■ 網膜剥離の症状

飛蚊症が前ぶれになることがよくあります。
多くは下の方の視野から少しずつ暗くなり、次第に真ん中まで剥離が進行すると極端に視力が低下し見えなくなります。
裂孔が起こる時に網膜の血管が切れた場合には、眼内に出血(硝子体出血)を起こして急激に見えなくなることもあります。

■ 網膜剥離の治療

初期の裂孔原性網膜剥離の場合には、レーザー治療で拡大を防止できる可能性がありますが、ある程度以上に進行している場合には入院手術が必要です。

網膜静脈閉塞

■ 網膜静脈閉塞とは

高血圧や動脈硬化などの全身疾患に伴うことが多く、眼底出血を起こす代表的な疾患です。
眼底の薄い組織の中を動脈と静脈が走っているため、所々で動脈が静脈の上を交差しています。
動脈の壁が硬くなると、静脈の壁は薄くて柔らかいため交差する場所で押しつぶされ、内腔が狭くなり血栓ができやすくなります。
血栓ができると血液が流れが止められてしまい、帰れなくなった血液の圧力が高くなり、静脈が破裂して出血を起こします。
閉塞部位により網膜中心静脈閉塞と網膜静脈分枝閉塞に分けられますが、80 % 以上は後者です。

■ 網膜静脈閉塞の症状

視力低下、視野欠損など。黄斑部に出血や浮腫が及ばない場合は無自覚。

■ 網膜静脈閉塞の治療

内服、注射、点滴などの薬物療法やレーザー治療などが行われます。
ある程度以上の血管閉塞範囲がある場合には、たとえ出血や浮腫がなくなって視力が良くても、何ヶ月から何年も経過してから硝子体出血や続発緑内障、網膜剥離を起こす可能性が高いので、時期を見て適切にレーザー治療を行ないます。
眼底の中心である黄斑部に出血や浮腫が強く、視力低下が強い時には、早めにレーザー治療を行います。

網膜前膜

■ 網膜前膜とは

網膜の表面が厚くなったり薄い膜様物ができ、それが縮むことにより眼底にシワがよってきます。
眼底疾患の手術を受けたことのある人や、別の眼底疾患がある時には起こりやすくなります。

■ 網膜前膜の症状

物がゆがんでみえたり、視力が悪くなったりします。

■ 網膜前膜の治療

症状が進行した場合には、手術が行われます。

加齢黄斑変性

■ 加齢黄斑変性とは

以前は欧米諸国に多くわが国では少ない疾患でしたが、近年になって増えている難病で、緑内障、糖尿病網膜症とともに失明原因の上位となり、社会問題になっている難病です。
50歳以上、60~70歳台に多くみられ、網膜の深層にある脈絡膜から新生血管が発生することによって起こる疾患です。
中心性漿液性網脈絡膜症のように、黄斑部に浸出性網膜剥離を起こしますが、出血を伴うことが多く、進行すると強い増殖性変化を起こし、視力に大きな後遺障害を残します。
見え方が少しでもおかしいと気がついた時には、すぐに眼底検査をして早期発見、早期治療をすることが重要です。
1~2 割の人では両眼性に起こるため、反対眼の検査も必要です。
近年では、ポリープ状脈絡膜血管症や網膜血管腫様増殖などの類縁疾患があることがわかってきています。

■ 加齢黄斑変性の症状

突然の出血による視力低下で気がつくこともありますが、通常はわずかな変視症、中心暗点、視力低下が生じてから、徐々にそれらが悪化してきます。

■ 加齢黄斑変性の治療

薬物治療、レーザー治療、ルセンティス療法などが行われます。
病変が進行してしまうと、治療しても視力改善は困難になります。

■ ルセンティス療法について

滲出型の加齢性黄斑変性症に対しルセンティスという薬剤を直接眼内に注入することで、加齢黄斑変性の原因である新生血管の増殖や成長を抑えることが可能な治療法です。

中心性漿液性網脈絡膜症

■ 中心性漿液性網脈絡膜症とは

40 歳代の男性に多いとされ、黄斑部と呼ばれる眼底の中心部にむくみ(漿液の漏れ)が起こるために発症します。
網膜色素上皮と呼ばれる細胞の機能障害や、深層の脈絡膜血管の循環の異常、薬の副作用によるものなど、複数の原因によって起こることが知られています。
経過が長引いたり再発を繰り返すこともあり、定期検査が必要です。

■ 中心性漿液性網脈絡膜症の症状

見ようとする中心の部分が歪んで見えたり、暗く見えたりします。

■ 中心性漿液性網脈絡膜症の治療

内服薬などで治ることが多いですが、数ヶ月も続く場合や、再発を繰り返す場合などではレーザー治療も行われます。